誰もが共感してしまう名恋愛小説を生み出してきた小説家・島本理生。
久しぶりに彼女の読んだことない作品を手にとった。
今作品に出てくるのはさまざまな恋愛の悩みをアラサー女子たち。
「30代って中途半端だよね、比較要因というか…」
そうつぶやきたくなったあなたの救世主となる小説となるかもしれない。
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こんな人におすすめ
○食べることに幸せを感じる方
○恋愛の悩みを共感してもらいたい方
○恋愛に疲れてしまった方
『わたしたちは銀のフォークと薬を手にして』あらすじ
仕事熱心に頑張る30歳OL の知世(ちせ)。
知世は仕事で知り合った年上の椎名さんと美味しいものを一緒に食べることを楽しみに仕事に励んでいた。
椎名さんと深い関係になれたらと思っていた知世。
しかし、椎名さんからHIVにかかっているという秘密を打ち明けられて…
知世の同級生の友達・飯田ちゃんと茉奈、既婚者の知世の妹・知夏(ちなつ)の恋愛模様も収録。
幸せになりたいと願い苦悩するアラサー女子の恋愛ストーリー。
『わたしたちは銀のフォークと薬を手にして』おすすめポイント
料理を楽しむ描写
今作品の特徴は、食べ物を美味しくシェアしている
シーンが多いということ。
章のタイトルも食べ物が入っているものばかりだ。
そして食べ物の描写が具体的で食欲をそそられる。
例えば、知世が椎名さんの家のベランダで蟹鍋食べるシーン
ほのかに甘いお米の味に少しずつ食欲が呼び覚まされた。 蟹のダシがどっと染みた白菜は、もうびっくりするほど美味しかった。
お米、白菜の味がどんな味か想像つきやすい。
島本理生が書く表現はいつも繊細で美しい表現をしてくれる。
そんな島本理生の感性が今作では存分に発揮されていると感じた。
また、蟹鍋が一区切りついて知世が感じたこと、情景も綺麗。
最後に甘いものを食べて、 ようやく 一区切りついた気がした。 食事も落ち込みも。 ワイングラスを揺らしながら 夜空へと視線を向ける。 月までもが、 柔らかく 金色に 光っている。
元気がなかった知世だが、美味しい食事と月によって気持ちが癒やされたことが伝わる。
登場人物たちの恋愛模様だけでなく、食事の様子などの表現描写に目を向けてみると、よりストーリーを楽しめるだろう。
どんな人にも悩みを抱えている
椎名さんとの今後に悩む知世。
知世以外にも本命になれない恋愛をしている茉奈、カッコよくて頼りになるけどいいご縁に恵まれない飯田ちゃんと幸せな恋愛って難しいことを思い知らされる。
彼女たちの恋愛の悩みに共感するアラサー女子はたくさんいるだろう。
中でも少し特殊なのは、知世の妹・知夏。
傍若無人で姉の知世に対してもひどい対応する知夏は結婚し、優しい旦那にも子供にも恵まれていた。
だが、知夏の旦那の部下の女性が誘惑したということが発覚してから、寂しさでふとたまたま出会った男性と頻繁に会うようになる。
知夏の性格の悪さに自業自得と思う人もいるだろう。
だが、知夏は親のために結婚し、子供を作り、知夏なりにも無理して頑張った背景があったようだ。
知夏のこころの陰を知り、ただの傍若無人な性格だと割り切れないし、ふとした瞬間に何か起きてしまうものなんだと思わされた。
お互いを思いやる
知世は椎名さんの病気のことを理解しようとし、椎名さんは椎名さんなりに知世のために大事にしている姿が描かれる。
互いのことを想い愛し合う姿に心が温かくなる。
友達の茉奈は椎名さんの病気を知り、知世にはもっといい人がいると言われたとき、知世は椎名さんみたいないい人はいないことを告げる。
なに一つ特別じゃない私の話をいつまでも飽きずに聞いてくれて、真剣に心配したり、絶対に傷つける言葉を使わずにアドバイスしてくれたり、旅行すれば、楽しくて、なにを食べても二人一緒なら美味しい。初めてだったんだよ。そんな人
椎名さんの優しさ、知世が椎名さんと一緒に幸せなことが伝わってくる。
病気という困難があるから幸せになれないわけではない。
お互いのことを大切にしていくことで幸せなひとときをシェアできるのだ。
知世と椎名さん
幸せな方向に行ってほしいと願いながら読み進めていった。
まとめ
この作品は一言でいうと、好きな人と一緒に美味しいものを食べたくなる
ストーリーである。
島本理生の作品はいくつか読んできたが、個人的には1位、2位を争うほど好きな作品だったかもしれない。
それは、どんな状況でも好きな人を想う気持ちを交わせば幸せをシェアできる
ことを知れたからだろう。
恋愛に疲れてしまった人もまた前を向いて歩き出すパワーが補充できる作品だった。